研究の背景および目的
生命を育む地球と、地球に生命のエネルギーを与えてくれる太陽。太陽も地球も元は宇宙空間に漂う分子ガスと塵から誕生しました。私達は電波望遠鏡「ALMA」を用いてこのような分子ガスと塵を観測することで、星や惑星がどのようにして誕生しているのかを調べています。ALMAは日米欧が共同で南米チリに建設した巨大な電波望遠鏡。解像度と感度が飛躍的に向上し、新たな発見が可能になりました。高精度の宇宙観測によって、太陽系、地球、生命の起源を詳らかにしたいと考えています。
▲標高5000m超の砂漠に位置する巨大施設ALMA
■おもな研究内容
「ALMA望遠鏡」は2013年に完成。66台のパラボラアンテナにより、世界最高の感度と解像度を実現しました。我々はALMAなどを用いて、星や惑星が形成される現場の観測を行っています。
①下図は約100万歳程度の若い星の周りの円盤をALMA望遠鏡によって観測した写真です。図中の破線は円盤に沿って2重溝状の構造があることを示し、この溝の中に木星のような惑星が形成されていると考えられます。惑星の誕生には数千万年が必要と考えられていた従来の説に変更を迫る新発見となりました。
▲若い星の周りの破線の溝 の中で惑星が誕生している
②下図は形成中の双子の星「連星」を観測した結果です。宇宙では太陽程度の質量の星の過半数は連星ですが、その成長過程はよく分かっていませんでした。
左の図はALMA観測の写真、右図はスーパーコンピュータを用いた数値計算の結果を示します。中心の二つ目玉の構造が形成中の連星です。連星周囲に二つの渦巻き状の構造が見られ、この渦巻きの間をくぐって分子ガスと塵が連星に降り積もって連星を成長させている(質量を重くしている)ことがわかりました。
▲連星は2つの渦巻きからガスと塵を取り込んで成長している
期待される効果・応用分野
私たちは、宇宙で星やその周りの惑星がどのように形成されるのかに、分子ガス、塵の空間構造、運動を調べることで迫っていく研究を行っています。最先端技術の集積であるALMAの利用により新たな発見が増えると、我々の太陽・太陽系・地球から生命の起源に至るまでの様々な議論が可能になります。科学や宇宙開発に対する国民の理解を得る助けになるとともに、次世代の子どもたちが理科や物理に興味を抱くきっかけにもなります。科学技術全般に波及効果がある研究と考えています。
■共同研究・特許などアピールポイント
●①、②ともに米の天文学専門誌アストロフィジカル・ジャーナルに掲載され、新聞・TVに取り上げられました。
●本学宇宙コースは日本有数。国内外の研究機関と連携し世界水準で宇宙を学ぶことができます。