研究の背景および目的
サツマイモは、火山灰土壌で台風の常襲地域である南九州の風土に合った地域を支えるでん粉資源作物です。しかし、従来のサツマイモでん粉は、他の市販でん粉に比べて、あまり特徴がなく用途が限られていました。そこで、農研機構九州沖縄農業研究センターや鹿児島県大隅加工技術研究センターと連携して、高付加価値なでん粉原料用サツマイモを育成してきました。例えば、特殊なでん粉を作るサツマイモを育成し、でん粉の分子構造や利用特性を明らかにして、サツマイモの用途拡大を図っています。また、収益性の良い多収・高澱粉や病虫害抵抗性の強いサツマイモなども育成しています。
■おもな研究内容
これまでに、サツマイモのアミロース含量変異でん粉や低温糊化でん粉を見出しました。でん粉原料用品種「こなみずき」は、でん粉の特殊な分子構造により、低温糊化性や耐老化性など、過去に無い性質の天然でん粉であることを明らかにしました。また、新品種「こないしん」は、多収・高でん粉で病虫害抵抗性も比較的強い品種であり、従来のでん粉原料用品種に替わるサツマイモとして期待されています。
低温糊化でん粉の特性
下の写真は、10%でん粉ゲルを冷蔵庫で7日間保存したものです。普通のサツマイモでん粉は変質により白濁してもろくなりますが、低温糊化でん粉は透明感とモチモチ感を保っています。
⇒ 変質しにくい天然でん粉です。
期待される効果・応用分野
低温糊化でん粉は、(1)低温かつ低エネルギーで糊化する、(2)糊化でん粉が老化(変質)しにくい、(3)生でん粉粒が酵素分解されやすい、といった利用上の優れた性質をあわせ持っています。例えば、でん粉が老化しにくいことにより、ゲル食品などの品質劣化が改善されます(写真)。また、 このようなでん粉を高圧処理や過熱水蒸気処理、湿熱処理などの加工技術により、さらに性質を多様化することができます。
■共同研究・特許などアピールポイント
●これらのサツマイモは従来の育種交配技術により育成されています。上記のサツマイモでん粉以外にも、興味あるでん粉が見つかりつつあります。ご要望のでん粉特性をお知らせください。
●でん粉の分子構造や物性の測定、多糖類やオリゴ糖などの各種糖質分析技術もそろっています。